NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会

第2回サーバントリーダーシップフォーラム  講演概要


◆「為さざるの罪」~ヤマトグループのDNAと現場力を引き出すリーダーシップ~
ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役社長 木川 眞氏

ヤマトグループは、1919年に日本で最も古い民間の運送事業者として創業されました。今や小笠原諸島などを含む全国に拠点を置き、日本人になくてはならないインフラとなり、その中で我々は社会のために何をすべきかを考えなければならない立場になっている、と言えるでしょう。
創業から10年目に路線事業開始という第1のイノベーションを起こしましたが、その後約50年間は大きな改革ができず、世間で「倒産するのでは?」と囁かれるような危機にも直面しましたが、そこで第2のイノベーションとして、1976年、当時の社長であった小倉昌男が新事業へのチャレンジである「宅急便」を開始しました。そして今、第3のイノベーションを起こそうとしています。現在の経済環境や少子高齢化において、今の事業構造に依存していては、企業は衰退してしまいます。ヤマトグループは7年後に創立100周年を迎えます。そのとき我々はどんな企業でありたいのか―。

当社のステークホルダーである「お客様」「社員」「社会」「株主」の満足度の総和を上げて行く、そしてこれからの時代により一層大切にしなければならないのは「社会」であると思っています。社会で一番愛される企業になるために、3つの改革(事業構造改革、業務基盤改革、意識改革)を進める「DAN-TOTSU経営計画2019」を、昨年2月に発表しました。
アジアを中心とした海外における宅急便の事業展開を進め、国内では既に出来上がっている宅急便のネットワークインフラを活用して地域密着型のサービスを展開していきます。

地域活性化のための新たな取り組みもスタートしています。当社が持つネットワークを含めたインフラを開放し、地域の民間企業、行政、住民、生産者、NPOに利用してもらうことで、地域経済や商店街の活性化、住民の生活支援を実現し、「新しい公共」を創るということです。
行政との協業による地域活性化の事例としては、岩手県で高齢者の生活支援を行なっている「まごころ宅急便」や、鳥取県境港での地元企業、行政、ヤマトグループが三位一体となった「山陰流通トリニティセンター」によって地元企業支援を展開しています。

そして、これらは単なるボランティアではないということです。ボランティアという軸足では長続きさせることは困難です。我々は営利企業として事業化できないとなりませんが、受益者が必ずしも高い対価を払って頂けるものではないので、広く浅くそして時間的に長く、少しずつ利益を出し合い、参加者を多く募り、共存するという全く新しい事業創造へのチャレンジなのです。
こうした事業戦略で進めて行こうとした矢先に、3.11の震災が起きたわけです。
従って、我々の事業戦略と震災での活動というのは表裏一体で、その時に取ってつけたものではなく、自然の流れからあのような活動になったことが多くあります。

1.現地での救援物資輸送協力隊
震災直後、地元社員が自発的に各自治体に救援物資の輸送協力を申し出て、活動を行っていました。後日、その情報を本社が知り、この取り組みを追認する形で会社として車両200台、人員500名を組成し3月23日から開始しました。

2.「宅急便1個につき10円」の寄付
1年間実施した結果、約142億3600万円となり、これは当社の年間純利益の約4割に相当する額となりました。寄付先を農業、水産業、生活基盤に指定したために、当初は全額課税と言われましたが、財務省と交渉した結果、指定寄附金に指定していただくことにより、全額無税で寄付をすることができました。この仕組みは、今後日本で企業が多額の寄付を行なう新たな文化になるきっかけになったと思います。
寄付先は、今やらないといけないことに特化し、見える支援・速い支援・効果の高い支援を選定基準としました。例えば、南三陸の仮設魚市場の建設や岩手県野田村の流失した保育所を安全な高台に再建する、といった国ができないことを中心に助成を行なっていきました。

では、なぜこのようなことができたのか?それは企業風土の裏付けがないとできないものであると、私は信じたいです。当社には創業以来、3つの社訓があります。

 一、ヤマトは我なり(全員経営)
 一、運送行為は委託者の意思の延長と知るべし(サービスが先、利益はあと)
 一、思想を堅実に礼節を重んずべし(コンプライアンス)

この社訓が具体的な行動に表すとどういうことなのか、会社や経営者が実際に社員へ見せるチャンスは殆どないものです。しかし、3.11の震災で社員が自発的に動いてくれたこと、そして会社は寄付と言う形でそれに答えたこと― その時の社員の気持ちを大切にし、社員がやりたいことを会社として追認することで、見せることができたと思います。
私は、社員に対して常日頃言ってきているのは「為さざるの罪」です。やらないで平穏無事に過ごすのではなく、絶対にやるべきだと思うなら失敗しても良いからチャレンジすることだと。結果が悪くても会社は認めるから、それを踏まえ再チャレンジすれば良い、と伝えています。

では、そのような社員をどのように育成してきているかということの一端が、この「感動体験DVD」でご覧頂けると思います。(DVD上映)

社員が企業の価値観を如何に共有できるかということ、また、仕事は「世のため人のため」であるということを言い続け、それを見せるチャンスがあれば見せるということ、そしてそれを決して「施し」ではなく、日常的な事業の中にそういう考え方を如何に埋め込めるかが重要だと感じています。

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◆顧客の感動を呼び起こす人間性尊重の組織づくり
ネッツトヨタ南国株式会社 取締役相談役 横田英毅氏

カーディーラーのビジネスチャンスを増やすためには、お客様との接触数を増やすことが必要で、現在ではお客様との関係を表すバロメーターは「来店客数」になります。弊社は、2010年に104,000人の来店客数となり、これは一度お越し頂いたお客様を大事にしてきた結果です。これは、私たちが「お客様を大事にしろ」と言い続けたわけではなく、第一線の営業、サービスに関わる社員自らが「お客様を大事にしたい」という気持ちが内側から湧きあがり、お客様を大事にしてきた結果です。私は、お客様が、時間のある時には「カーディーラーの所に行ってみよう」と思って下さるような、会社づくりを行ってきました。

リーマンショックの時に、オールトヨタとしての売上が大きく落ち込んだ中、弊社では売り上げが197%に伸びました。この理由としては、①第一線の営業担当者とそれをバックアップする若手社員が危機感を持ったこと。②ファンになって下さったお客様が「厳しいでしょ?買ってあげようか?」とおっしゃって下さり、売り上げを伸ばすことができたのです。
顧客満足度調査の中で「上司がお客様の所へ挨拶に行ったか」という項目がありますが、この項目だけはオールトヨタの中で弊社が数値を下回っています。これは、ピラミッド型ではなく、逆ピラミッド型組織で、第一線に全て権限移譲していること、自分で全て解決できる社員を育成するという方針から出た結果です。
また「迅速、丁寧、きめ細かい、笑顔がいい」という評価を頂いていますが、それはやらされているからではなく、彼らの内側から動機が湧き上がっているからなのです。

支店長になった時、自分は「どういう会社を作りたいか?」「自分はどういうリーダーシップをとるのか?」と考えた際に、『自分の正しいと信じる方向へメンバーを自主的に行動させ、結果として全体のパフォーマンスを最大化する影響力を持つ。優秀なリーダーとは、自らの使命・目的とメンバーの意思とを結び付けることができる。メンバーはあたかも自分たちが最初から望んでいたかのように自主的にリーダーの思う方向へ行動する。』このようなリーダーになろうと思ったわけです。形式的なリーダーではなく、本質的なリーダーである幹部社員の集団にしよう、そうすれば部下も育つに違いない、幹部社員にはマネージャーは黒子であると伝えてきました。

人材育成においては、働く動機を高めていくことが大切ですが、それには2つのパターンがあり、①延々と動機づけをする(問題対処的)②動機が内側から湧き上がるような環境をつくる(問題解決型)、ということです。我々は至るところで対処ばかりをするような習慣が身についてしまっています。給与、賞与、昇給というような「頑張りなさいよ」と言う外側からの動機づけです。人は外側から動機づけられて動いていると、いつの間にか内側から動機が湧き上がることがなくなってしまうのではないでしょうか?内側からの動機づけが100%湧いてくるというのが「やりがい」ではないでしょうか。

採用においても、知名度、安定性、好待遇という就職基準で入社した場合、3年で3割が退職してしまうと言います。これは、この就職基準が「やりがい」よりも劣ってしまうからではないでしょうか。仕事に「やりがい」があるということを、口で説明するのではなく、学生自身が気づくように仕向けるのです。その結果、やりがいに気づいた学生が集まり、やりがいを感じられる人ばかりが働く集団になるわけです。

社員に「今日までに嬉しかったこと」というアンケートを取ったところ「「お客様に喜んで頂いたこと、感謝されたこと、誉めて頂けたこと」という回答でした。つまり、会社にとって一番大事なのは社員ですから、その社員を大切にしようと思ったら、朝から晩までCSを追求したら良いんだ、お客様に良いサービスを提供することばかり考えれば、やりがいを感じられる。つまり「利己を追求すれば利他に届く」「利他を続けるとやりがいを感じ、幸せを感じられる」というメカニズムがあると思いました。

また「自分の考え方を変えることで行動が変わってきたという実感がある。もっと成長できるという気持ちが生まれて、それがやりがいになる」と言う社員からの声があります。「変えられるものは自分と明日、変えられないものは他人と過去」であり、自分が自分を変えていくような組織づくりが必要だと思っています。

最後に、感動の話をしたいと思います。今まで私は、感動は満足の先にある凄いものだと思っていましたが、満足の先にあるものは「大満足」であり「感動」ではない、ということがわかってきました。反対側には不満や怒りがあり、損得に関係し、感動とは座標軸が違います。感動の反対は無関心だそうで、人を感動させるには人に関心を持つことが大事なのです。
満足を提供している人は苦しいですが、感動を提供している人は楽しんでいます。
満足を提供された人はそのことを忘れやすいですが、感動を提供された人はそのことを忘れないものです。口コミの良い噂は大抵感動なのです。満足は期待の延長線上にあるので期待を上回らないとできません、しかし感動は繰り返すことができ、効果的です。満足は誰でも提供できますが、感動は感性の高い人でないと提供できません。人は何から感動するかというと、驚き、尊敬、信頼、共感、感謝、親密、気配り、思いやり、4S(整理、整頓、清潔、清掃)などで、これらの事柄を一言でいうと「人間力」なのです。
満足は問題対処的で、感動は問題解決的なものです。

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◆【セッション】人を大切にする経営
ホッピービバレッジ株式会社 代表取締役社長 石渡美奈氏
株式会社アンゼン・パックス 代表取締役社長 尾関勇氏

石渡: 創業100周年を迎えた2010年に3代目社長を引き継ぎました。父から次のバトンは貴方に渡すからと言われた時、「これからは貴方の想いを共に実現する社員を育てなさい」と言われ、そこから組織を根本から変えることに力を入れました。
売り上げを伸ばすことができた要因に、外的要因としての焼酎人気、健康志向、昭和回帰等がありますが、中小企業にとって売り上げに大きく作用するのは、むしろ内的要因であると思っています。つまり、人材や組織に要因があると分析しております。

仕掛けや仕組みはいくらでも教えられますが、企業文化(カルチャー)は真似ができない、カルチャーの礎は人なので、人を育てるということは他社が真似できない企業文化を創るということになります。

尾関: 創業80年になる赤坂のお菓子パッケージ会社の3代目社長として引き継ぎました。私が入社した頃は、悪い意味で自分勝手な「個人商店」でしたが、1998年頃人事権を渡されてから組織改革を始めてきました。
父とは人事の考え方で色々衝突してきました。例えば、父は「女性営業は良くできるが、長続きしないから問題だ」と言う持論でしたが、男性でも女性でも能力のある社員を活かせない会社の方が、むしろ会社の存在意義がない、と私は思っています。
できる営業社員=できる管理職と言う考えも父と衝突した考えで、管理スキルと営業スキルは異なると思っています。
フェアな判断は人間だから難しいですが、できる管理職はフェアにものごとを見ていると思いますし、そのグループの人達の効率が最大化するのではないかと思います。

石渡:弊社の人材教育では、「教育と共育」両方を導入しています。内定~入社3年目までは、教え育てる「教育」を行います。徹底したティーチングとコーチングです。
「貴方たちの個性はいらない」とまで言っています。学生のものさしで社会人の判断をしても何の役にも立ちません。
入社4年目以降、共に育つ「共育」という考え方です。教える側が成長しないと教えられません。知識の切り売りをしても人は育ちません。結局は、「企業は人なり、組織は人なり」と言うことです。
トップの質が社員の質を決め、それが組織の質、社会の質、国家の質に繋がっているわけで、社員に幸せな人生を送ってもらうためにも、トップが常に質を磨き続けなければいけない、と自分に課しています。

人も組織も「守破離」を逸脱して成長はあり得ないと言ってきたのですが、何を守れば良いかわからない若手社員にはうまく行きませんでした。彼らには、まず何をどのように守るのかを教えなければなりません。
彼らは「社会人としての実践力(=活きる人間力)」を身につける方法を知らないのです。そこで、弊社では「新版守破離」(Pre 守)を作り、リーダーである私たちが学び方、教わり方を教えるわけです。
教わる前に一つ大切なことは「無知の知」です。自分は何も知らないというポジションにいること、何か知っていると思ったら自分の可能性に限界をつけてしまう、「無知の知」は自らの可能性を無限に広げるための考え方なのです。

私は、毎年2、3月頃に入社前の新卒社員の親御様の所へご挨拶に伺います。ほとんどが「中小企業で大丈夫?」「女性社長で大丈夫?」というような不安感を持っておられるのですが、人材教育の話をして最後には「直接話を聞けて良かった」「石渡さん、これからは貴方がうちの子を育ててください」と言われるんですよね。1年で1番背筋が伸びる瞬間です。弊社を信じて来てくれる純粋無垢な新入社員を裏切りたくないという思いが、社員基礎教育に力を入れて行ったというプロセスですね。

尾関: 組織のリーダーが各自の持ち味の違いと柔軟さを見極め、個人の持ち味がバランスよく配置されるように仕組むことがリーダーの役目ではないかと思います。
私は、会社より個人の生活が大切で、個人の生活がちゃんとしていなければ、会社の仕事に100%力を発揮することはできないと思っています。人生の各シーンで働き方、社会との接し方は異なりますので、会社もできるだけそれに合わせて行く必要があり、それが強い社員と会社を作ることだと思っています。
社員の持ち味を活かすことに心血を注ぎ、社員が力を最大限に発揮できるように、私自身がスポイルされるようなことをしてはならないと思っています。

石渡: 本田宗一郎氏の「真理に徹する」を行動指針としています。私が追及する真理は「お客様のため」であり、それを現場で汗水流して実現しているのが社員たちです。私がやらなければならないのは、その社員が安心して過ごせる安全な職場環境づくりに、徹することではないかと感じています。
真理の追究は、ときに社員に誤解を招くこともありますが、決してぶれてはならず、私の私的欲望、我欲は徹底的に排除すべきと思っています。
人を育てるのはつらくて大変ですが、やりがいがあります。金井先生の言葉に「人を育てていると思うから頭にくる、たまたまご縁があって、その人の成長に関わらせて頂いているんだ、という姿勢が人を育てる者としての正しい考え方である」というのがあります。まだまだ我欲を捨てきれない未熟者の3代目ですが、有難いバトンをお預かりしていることに感謝し、謙虚な姿勢で携わって行きたいと思っております。

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◆サーバントリーダーシップの概略と国際カンファレンスの報告
NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会 理事長 真田 茂人

サーバントリーダーシップを提唱したのは、ロバート・グリーンリーフで「リーダーである人はまず相手に奉仕する」というHow toではなく哲学です。
2000年以上前からある本質的なリーダーシップ論で、新しい考え方ではありません。

あるミッションを実現するにあたり、サーバントリーダーと従来的な君臨型リーダーを比較すると、君臨型リーダーは自分が主役、主役をメンバーが支えるという図式ですが、サーバントリーダーは、主役はメンバーであり、それをリーダーが支えるというイメージになります。サーバントリーダーは優しいだけのリーダーで、メンバーに媚びると誤解されますが、決してそうではありません。何かのミッションやビジョンに向かう時、メンバーが活躍できるようにサポートし支えていく、それがサーバントリーダーです。

最近スポーツ界でもサーバントリーダーが増えてきており、日本ハムの栗山監督が典型的なサーバントリーダーだと思います。彼は「やるべきことは選手がプレーし易い環境を作ること」と言っており、自分の都合は二の次、常に選手のことを最優先に考えています。選手からも「選手一人ひとりを見てくれる、選手が頑張る気持ちにさせてくれる監督」という評価をされています。また、なでしこジャパンの佐々木監督は「おらがおらがになってはいけない。おかげおかげの精神。自分の思いに走って、選手の思いを汲み取れないのは良くない」と話しています。

最近、アメリカでのサーバントリーダーシップカンファレンスでの発表事例が、企業だけでなく、アメリカ空軍や警察などにも広がっています。例えば、アメリカ空軍全体ではありませんが、ある部門ではサーバントリーダーシップが広められています。軍隊というと真逆の考え方にあるように思いますが、彼らは「いざとなれば命を落とすかもしれない、上官との信頼関係がなければ命を預けられない。そのためには日常の信頼関係構築が大切、人を大切にする文化、それを目指している」と話していました。

日本では、自分がサーバントリーダーシップを実践していると意識されている方は少ないですが、実際にサーバントリーダーシップの要素を発揮し、成果を上げている方はたくさんいらっしゃいます。

サーバントリーダーシップはサーブするだけと誤解されますが、リーダーシップですので、
先見力、概念化など方向性を指し示す能力も入っています。
「大義あるミッション、ビジョン、バリューを指し示す(ビジョナリーの側面)」「メンバーに奉仕する(サーバントの側面)」の2つが揃って、サーバントリーダーシップであると思います。

サーバントリーダーシップの効果は、メンバーのコミットを引き出すため、組織の実行力を高め、戦略面でも効果を示します。サーバントリーダーは謙虚であるため、変化を正直に受け入れ、現実的な戦略を導くことができるのです。

現代の難しい時代を乗り切るには、「学習する組織」を創ることができるリーダーシップであると言われていますが、それがサーバントリーダーシップであると思います。

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